シャトー・ディケムにとっては何と特筆に値する三部作となった ことだろう（私が言っているのは1990年、1989年、1988年のことである）。このヴィンテージは、スタイルの点では1988年より1990年寄りだ。非常にとろりとした舌触りの、中程度の黄金色をした ワインで、蜂蜜に浸したオレンジ、パイナップル、アンズ、モモがにじみ出てくるようだ。非常に力強く、リッチで、厚みがあり、大量のグリセリン、夢のようなすばらしい香り、低めの酸が感じられるが、度肝を抜くようなレベルの深みや凝縮感もあるし、フィニッシュはゆうに１分以上も続く。1990年と同じく、よりつつましい1988年の兄貴分よりは派手だし、よりニュアンスのある1988年よりは印象的な力強さや芳醇さが感じられる傾向にある。偉大な、偉大なイケムだ！予想される飲み頃：現在～2065年。最終試飲年月：2002年12月

億万長者のお気に入りの甘口ワインであるシャトー・ディケムは、予想通り、1988年とともに輝かしい労作となった。スケールが大きく、がっしりしていて豊かで、とろりとしてなめらかな舌触りのこのワインは、半世紀以上にわたって楽々と成長するに違いない。1988年や1986年のような有無を言わせぬフィネスと複雑さはないが、どちらのヴィンテージよりもはるかに重く、豊かである。付加された肉付きとグリセリンが、1976年をしのばせる。蜂蜜で覆われたココナツや熟しすぎたようなパイナップルとアプリコットの燻したような、巨大なノーズを持ち、極めてアルコール度数が高く、豊かなワインである。イケムの最も若いワインと同じように、このワインの構造はほとんど目立たない。これらのワインは非常にエキス分が多く、豊かで、しかも若いうちに飲むこともできるので、50年以上も飲み頃が続くとはなかなか信じがたい。1989年は1980年代につくられたイケムの中で最も豊かで精力的な1983年を凌ぐ、複雑さのあるエッジを持っている。このワインが、将来有望な1988年と1986年のイケムが持つような並外れた香り高い複雑さを成長させていけるかどうかはまだわからない。最終試飲年月：1997年11月